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Someone’s Collection Blues #02 Tシャツ
¥3,500
Someone’s Collection blues 強制労働の呪縛から抜け出したENTERTAINMENT店主のカズミは、彼を救ってくれた女と古都での出会いを糧に、次なる目的地を学園都市へ定めた。 その旅程、立ち寄った宿場町で商品のコンクリートオブジェを褒めちぎる老人と出会った。エッエッと笑う老人は殊更にカズミの商品群を褒め、自分はこの宿場から三里先にあるラビリンスと呼ばれる美術館の関係者だと名乗り、商品の販売をやらないかと持ちかけてきた。美術館という言葉に興味を惹かれ、二つ返事で了承すると、では行こうとカズミを車に乗せ、車中でこれから行く場所の成り立ちを教えてくれた。それは、小田一成という男から始まる。 小田一成は古くからこの地を守ってきた一族の末裔だという。責任感が強く、勤勉な一成は皆から信頼される傑物であった。22歳の春に父が死に、若くして家を継ぐとともに、結婚したが、時を同じくして始まった戦争によって戦地に出兵されてしまった。激動の時代さね。運転しながら老人は饒舌だった。何度もこの話をしたのだろう、淀みなく昔話は続く。一成の勤勉さは戦場でも変わることなく、よく助け、よく殺した。戦後、やっとの思いで国に帰るも、彼を待つ妻もお腹にいたはずの子も、生家も、帰りを待つ全ては空襲で消え失せていた。抱えきれない絶望と裏山にあった石切り場を残し、先祖から受け継いだ広大な土地を全て売払った。そして、その金を元手に、戦後の混乱を利用して莫大な富を築くと、残った石切り場を深く深く堀り、20年の歳月をかけて1000mの地下まで続く螺旋階段を作り上げた。 そろそろ到着だと老人が言い、話を途中で切り上げた。あなたが一成か。カズミが問うと老人は一成は死んだよと答えた。1000mに到達したあたりだ。きりでも良かったんじゃないのか。穴の底で己の頭を猟銃で撃ち抜き、この世から消えたよ。莫大な遺産と螺旋階段を残して。老人はエッエッと笑い、車は停止した。 石切り場の切立った岩壁の一部に、コンクリートの壁が移植されたようにひっつき、3m程の扉はくすんだモスグリーンだった。堅牢な扉を開けるとすぐに地下へ続く螺旋階段が見えた。階段は男が二人並んでも余裕がある広さで、なだらかに地下へ向かって行く。丸いランプが等間隔で階段を照らしているので考えていたよりも歩きやすかった。前をいく老人が続きを語り出す。先は長い、ゆっくり聞いてくれと言って。 一成の死後、遺言に従って穴掘りを手伝った5人に螺旋階段と遺産が相続された。相続者たちは莫大な金とこの場所を大いに持て余した。そこで5人は螺旋階段の底から横穴を掘り始め、それぞれの空間を作り出すことにした。あるものは物置に、あるものは書斎にしたりと5人は無計画に拡張を続けたが、遺産が底をつく気配はなかった。そこで5人は投資として美術品を蒐集し、穴の底に保管することにした。湿気の問題に腐心したが解決してしまえば一年中、穴の気温は一定に保たれ、その構造はセキュリティの観点からも都合が良かった。美術品の収蔵が軌道に乗り始めると、拡張速度も上がり、次第に人が集まりだした。穴掘り師を筆頭に、壊れた道具を直すために鍛冶屋が定住し、医者が必要になり、そして、料理人と続き、気づけば穴の中には小さな町ができ、家族を迎え入れるものも出始めた。拡張に伴い、地上との運び屋が生命線になり、穴の中での農耕も試みられた。一週間に一度は陽の光を浴びることが義務付けられたが、拡張につれて地上との距離が伸びると誰も外に出なくなった。そこで、紫外線ライトが各家に取り付けられた。穴の中で結婚し、子を授かるものも珍しくはなかった。ひとつの区画は幅50m、奥行き50m、高さ10mに整地され、壁は白く塗られてホワイトキューブとなった。穴掘り師たちが築いた空間に美術品が収蔵されていたが、いつ頃からか展示し、皆で鑑賞するようになった。そして穴はラビリンスとよばれるようになり、相続者たちも自らをキュレーターと名乗るようになった。キュレーターは絵画、彫刻、映像などそれぞれ専門の分野を決め、美術作品を蒐集し、展示していった。彼らにはもともと審美眼などなかったが、ありあまる富はいつでも彼らの味方となった。老人の話は終わらない。底にたどり着くまで語ることはいくらでもあるのだ。深淵に引きずり込まれてしまうのではないかと錯覚し、肌が粟立つも、足は先へ先へと勝手に降りていった。 やっとの思いで螺旋階段の底に着いたころにはカズミの身体は悲鳴をあげていた。横穴を進み、いくつかの小部屋を抜けたところで、視界がひらけ、巨大な空間に到達した。老人は美味そうに水を飲み、カズミにも勧めてくれた。そこは話に聞いたホワイトキューブの展示室だった。煌煌と照らされた空間は充分にスペースを取って、絵画が一点一点展示されている。そして壁にかけられた作品に呼応するように金属や石材の彫刻作品が配置されていた。巨大な稼働壁が迷路を形成し、作品同士が鑑賞の妨げにならないよう最善が尽くされて区切られていた。ここは始まりの展示室で、最初期の収蔵品が鑑賞できる。お粗末なキュレーションだがねと、老人が言い、こっちだ。と感心仕切っていたカズミに催促する。巨大な稼働壁を抜けた奥、積み上がったブラウン管の作品の周りに、人集りができており、荷台引きの馬の姿があった。あれは運び屋たちさ。いまじゃ先端はここから数百キロは先になっている。向こうでは町ごと移動しながら掘り進めていてね、中では農耕も行われてるが、足りないものは沢山ある。美術品もそうだが、画材なんかも必要でね。ラビリンスのアーティストも結構な数になったが、外の芸術を見ることは刺激になる。運び屋は生命線なのさ。いまは3つの旅団に分かれて中継しながら奥まで外の世界の資材を運び、中からは岩盤が運び出されている。全盛期は旅団ももっとたくさんあったのだがね。今は拡張の速度もかなり落ちた。どうするかい、これから出発する。芸術を鑑賞する旅さ。飽きはしないだろう。そして、先端にたどり着けば君は晴れてラビリンスのミュージアムショップオーナーだ。地上には帰れないがね。この美術館は未だに設営中さ、一成が始めた時から数えれば70年近くになるが、いまだ終わっていない。穴掘り師たちが整地した空間を、インストーラーたちはキュレーターの指示で飽きることなく、いつまでも取っ替え引っ替えやってる。勘の良さそうな君ならもう気づいているだろう。私もキュレーターのひとりだよ、二代目だがね。さあ、どうする。老人はカズミに手を差し伸べた。大きな手だ、そう思った。 はたして、自分の選択は正しかったのだろうか。壁にかけられた絵画を眺めながら逡巡する。どんな選択も後悔は残る。ならば、より自由に繋がる選択をしよう。後悔を鼓舞する無意味な独り言は反響して消えていった。店を持つ夢を今し方、手放したところだ。誰もいなくなった巨大なホワイトキューブで、作品を独り占めしながら長い時間を過ごした。そして、気に入った作品はキャプションまで丁寧に描いて記録した。描いていて直ぐに気がついたのだが、作品のキャプションに記載された作家名は全て上から殴り書きで消されていた。誰かの悪戯だろうか、答えを知るだろう老人は、運び屋の旅団と共に旅立ってしまった。謎がまたひとつ増えたが、もう気にならなかった。独り残ったカズミは長い長い螺旋階段を登りだした。別れ際に老人にした質問を思い出す。この展覧会にタイトルはあるのかと。エッエッと笑い、老人は長らく『無題』だったがね、いいのを思いついたよ『人々を照らす明かり』はどうかねと答えた。 #01がびっくりするほど好評で、完売後もお問い合わせが相次いだキャプションシリーズ。 満を辞して、#02をリリースします! フロント右胸のポケット上に作品のキャプションを、作家名は殴り書き刺繍で、1点1点消し方が違うのも#01から変わらずです。 季節関係なくTシャツ着るだろう、着てくれるだろうってことで、このタイミングで敢えて、 気合い入れてプレゼンします!! 大人気のヘザーグレーに加え、潔く(ENTERTAINMENTでは初の)ホワイトいきます! 押忍!! caption - land art ホワイト Sサイズ:着丈65, 身幅47.5, 袖丈18.5 cm Mサイズ:着丈68, 身幅50, 袖丈19.5 cm Lサイズ:着丈71, 身幅52.5, 袖丈20.5 cm XLサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈21.5 cm 綿100% 6.2オンス caption - sculpture ヘザーグレー Sサイズ:着丈65, 身幅47.5, 袖丈18.5 cm Mサイズ:着丈68, 身幅50, 袖丈19.5 cm Lサイズ:着丈71, 身幅52.5, 袖丈20.5 cm XLサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈21.5 cm 綿100% 6.2オンス design by Ryohei Kazumi photo & text by takaaki akaishi
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Someone’s Collection Blues #02 スウェット
¥5,500
Someone’s Collection blues 強制労働の呪縛から抜け出したENTERTAINMENT店主のカズミは、彼を救ってくれた女と古都での出会いを糧に、次なる目的地を学園都市へ定めた。 その旅程、立ち寄った宿場町で商品のコンクリートオブジェを褒めちぎる老人と出会った。エッエッと笑う老人は殊更にカズミの商品群を褒め、自分はこの宿場から三里先にあるラビリンスと呼ばれる美術館の関係者だと名乗り、商品の販売をやらないかと持ちかけてきた。美術館という言葉に興味を惹かれ、二つ返事で了承すると、では行こうとカズミを車に乗せ、車中でこれから行く場所の成り立ちを教えてくれた。それは、小田一成という男から始まる。 小田一成は古くからこの地を守ってきた一族の末裔だという。責任感が強く、勤勉な一成は皆から信頼される傑物であった。22歳の春に父が死に、若くして家を継ぐとともに、結婚したが、時を同じくして始まった戦争によって戦地に出兵されてしまった。激動の時代さね。運転しながら老人は饒舌だった。何度もこの話をしたのだろう、淀みなく昔話は続く。一成の勤勉さは戦場でも変わることなく、よく助け、よく殺した。戦後、やっとの思いで国に帰るも、彼を待つ妻もお腹にいたはずの子も、生家も、帰りを待つ全ては空襲で消え失せていた。抱えきれない絶望と裏山にあった石切り場を残し、先祖から受け継いだ広大な土地を全て売払った。そして、その金を元手に、戦後の混乱を利用して莫大な富を築くと、残った石切り場を深く深く堀り、20年の歳月をかけて1000mの地下まで続く螺旋階段を作り上げた。 そろそろ到着だと老人が言い、話を途中で切り上げた。あなたが一成か。カズミが問うと老人は一成は死んだよと答えた。1000mに到達したあたりだ。きりでも良かったんじゃないのか。穴の底で己の頭を猟銃で撃ち抜き、この世から消えたよ。莫大な遺産と螺旋階段を残して。老人はエッエッと笑い、車は停止した。 石切り場の切立った岩壁の一部に、コンクリートの壁が移植されたようにひっつき、3m程の扉はくすんだモスグリーンだった。堅牢な扉を開けるとすぐに地下へ続く螺旋階段が見えた。階段は男が二人並んでも余裕がある広さで、なだらかに地下へ向かって行く。丸いランプが等間隔で階段を照らしているので考えていたよりも歩きやすかった。前をいく老人が続きを語り出す。先は長い、ゆっくり聞いてくれと言って。 一成の死後、遺言に従って穴掘りを手伝った5人に螺旋階段と遺産が相続された。相続者たちは莫大な金とこの場所を大いに持て余した。そこで5人は螺旋階段の底から横穴を掘り始め、それぞれの空間を作り出すことにした。あるものは物置に、あるものは書斎にしたりと5人は無計画に拡張を続けたが、遺産が底をつく気配はなかった。そこで5人は投資として美術品を蒐集し、穴の底に保管することにした。湿気の問題に腐心したが解決してしまえば一年中、穴の気温は一定に保たれ、その構造はセキュリティの観点からも都合が良かった。美術品の収蔵が軌道に乗り始めると、拡張速度も上がり、次第に人が集まりだした。穴掘り師を筆頭に、壊れた道具を直すために鍛冶屋が定住し、医者が必要になり、そして、料理人と続き、気づけば穴の中には小さな町ができ、家族を迎え入れるものも出始めた。拡張に伴い、地上との運び屋が生命線になり、穴の中での農耕も試みられた。一週間に一度は陽の光を浴びることが義務付けられたが、拡張につれて地上との距離が伸びると誰も外に出なくなった。そこで、紫外線ライトが各家に取り付けられた。穴の中で結婚し、子を授かるものも珍しくはなかった。ひとつの区画は幅50m、奥行き50m、高さ10mに整地され、壁は白く塗られてホワイトキューブとなった。穴掘り師たちが築いた空間に美術品が収蔵されていたが、いつ頃からか展示し、皆で鑑賞するようになった。そして穴はラビリンスとよばれるようになり、相続者たちも自らをキュレーターと名乗るようになった。キュレーターは絵画、彫刻、映像などそれぞれ専門の分野を決め、美術作品を蒐集し、展示していった。彼らにはもともと審美眼などなかったが、ありあまる富はいつでも彼らの味方となった。老人の話は終わらない。底にたどり着くまで語ることはいくらでもあるのだ。深淵に引きずり込まれてしまうのではないかと錯覚し、肌が粟立つも、足は先へ先へと勝手に降りていった。 やっとの思いで螺旋階段の底に着いたころにはカズミの身体は悲鳴をあげていた。横穴を進み、いくつかの小部屋を抜けたところで、視界がひらけ、巨大な空間に到達した。老人は美味そうに水を飲み、カズミにも勧めてくれた。そこは話に聞いたホワイトキューブの展示室だった。煌煌と照らされた空間は充分にスペースを取って、絵画が一点一点展示されている。そして壁にかけられた作品に呼応するように金属や石材の彫刻作品が配置されていた。巨大な稼働壁が迷路を形成し、作品同士が鑑賞の妨げにならないよう最善が尽くされて区切られていた。ここは始まりの展示室で、最初期の収蔵品が鑑賞できる。お粗末なキュレーションだがねと、老人が言い、こっちだ。と感心仕切っていたカズミに催促する。巨大な稼働壁を抜けた奥、積み上がったブラウン管の作品の周りに、人集りができており、荷台引きの馬の姿があった。あれは運び屋たちさ。いまじゃ先端はここから数百キロは先になっている。向こうでは町ごと移動しながら掘り進めていてね、中では農耕も行われてるが、足りないものは沢山ある。美術品もそうだが、画材なんかも必要でね。ラビリンスのアーティストも結構な数になったが、外の芸術を見ることは刺激になる。運び屋は生命線なのさ。いまは3つの旅団に分かれて中継しながら奥まで外の世界の資材を運び、中からは岩盤が運び出されている。全盛期は旅団ももっとたくさんあったのだがね。今は拡張の速度もかなり落ちた。どうするかい、これから出発する。芸術を鑑賞する旅さ。飽きはしないだろう。そして、先端にたどり着けば君は晴れてラビリンスのミュージアムショップオーナーだ。地上には帰れないがね。この美術館は未だに設営中さ、一成が始めた時から数えれば70年近くになるが、いまだ終わっていない。穴掘り師たちが整地した空間を、インストーラーたちはキュレーターの指示で飽きることなく、いつまでも取っ替え引っ替えやってる。勘の良さそうな君ならもう気づいているだろう。私もキュレーターのひとりだよ、二代目だがね。さあ、どうする。老人はカズミに手を差し伸べた。大きな手だ、そう思った。 はたして、自分の選択は正しかったのだろうか。壁にかけられた絵画を眺めながら逡巡する。どんな選択も後悔は残る。ならば、より自由に繋がる選択をしよう。後悔を鼓舞する無意味な独り言は反響して消えていった。店を持つ夢を今し方、手放したところだ。誰もいなくなった巨大なホワイトキューブで、作品を独り占めしながら長い時間を過ごした。そして、気に入った作品はキャプションまで丁寧に描いて記録した。描いていて直ぐに気がついたのだが、作品のキャプションに記載された作家名は全て上から殴り書きで消されていた。誰かの悪戯だろうか、答えを知るだろう老人は、運び屋の旅団と共に旅立ってしまった。謎がまたひとつ増えたが、もう気にならなかった。独り残ったカズミは長い長い螺旋階段を登りだした。別れ際に老人にした質問を思い出す。この展覧会にタイトルはあるのかと。エッエッと笑い、老人は長らく『無題』だったがね、いいのを思いついたよ『人々を照らす明かり』はどうかねと答えた。 #01がびっくりするほど好評で、完売後もお問い合わせが相次いだキャプションシリーズ。 満を辞して、#02をリリースします・ フロント右胸に作品のキャプションを、作家名は殴り書き刺繍で、1点1点消し方が違うのも#01から変わらずです。 裏起毛で厚手生地のミックスグレーに加え、かなりいい具合のインディゴカラーを、 気合い入れてプレゼンさせていただきます!! 押忍!! caption - painting ミックスグレー Sサイズ:着丈65, 身幅52, 袖丈59 cm Mサイズ:着丈68, 身幅55, 袖丈60 cm Lサイズ:着丈71, 身幅58, 袖丈61 cm XLサイズ:着丈74, 身幅61, 袖丈62 cm 綿65%、ポリエステル35% 裏起毛 12.0オンス caption - photo インディゴ Sサイズ:着丈63, 身幅48, 袖丈61 cm Mサイズ:着丈66, 身幅51, 袖丈62 cm Lサイズ:着丈69, 身幅54, 袖丈62 cm XLサイズ:着丈72, 身幅57, 袖丈63 cm 綿100% 裏パイル地 12.2オンス ★インディゴ染料及び顔料を使用している製品は、染料及び顔料の性質上、水や汗や摩擦などにより多少色落ちしたり移染することがあります。必ず単独での洗濯をお願いいたします! design by Ryohei Kazumi photo & text by takaaki akaishi model by shogo kosakabe
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酵素PUNK Tシャツ
¥3,500
酵素PUNK カオルは分厚いアクリルで隔てられた簡素な部屋に座る祖母を見ている。 会話のために無数の穴が円形に空いたアクリル越しの祖母は幾分やつれて見えるが、いつもの笑顔は変わらない。面会時間は限られている。久しぶりの挨拶もそこそこに本題を切り出す。なぜ、こんなことになったのかと。祖母は何度も繰り返された尋問にすっかり飽きてしまったようで、全く、アンタもかと、ため息をついた。皺で縁取られた笑顔が仏頂面に変わり、ただ、美味しいおむすびを食べて欲しかっただけと答えた。 カオルの祖母、江野道ヨシは87歳と4ヶ月、先日、突然やってきた警察に身辺警護の名目で、この警察署に連行され、以来、拘留が続いている。 もともと、祖母は大らかで、細かいことは気にしない性格であったけれど、罪を犯すような人間ではないし、この年齢で突飛な行動をとるような…。 そこまで考えてカオルは『おむすびたもつ』の人気が出始めた頃を思い出していた。そういえば、急に店が繁盛しだしたのは祖父の死後だった。あの頃からおばあちゃんは生き生きとしていたように感じる。 「教えて、おばあちゃん。おじいちゃんが亡くなってからおむすびに何があったの」 途端、ヨシの表情が消えた。視線は虚空を見つめているようだった。長い沈黙の後こちらを見据える。 そうさね、カオルちゃん。アンタにならねえ、そう。ヨシはぼそぼそと言葉にならない言葉を織り交ぜ、語り始めた。 「保さんが亡くなった日、あれはとてもとても悲しい日だったの」 『おむすびたもつ』はカオルの祖父母、江野道保とヨシが経営した商店街の一角にある、慎ましい小さなおむすび屋である。持ち帰り専門で、人ひとりを相手にするのがやっとの、煙草屋のようなカウンターが通りに突き出していた。そんな、『おむすびたもつ』に転機が訪れるのは保が病に倒れ、その葬儀が行われる前日であった。 ヨシは保と共に歩んだ60年、時間という倦怠感がヨシを蝕むことはなく、愛を誓ったあの日から、一切、変わることなく保を愛し続けていた。 だからこそ、保の突然の死によって唯一の居場所が崩れ去ったことで酷く動揺した。衰えた瞳からは止めどなく涙が溢れ、長い人生で達観したつもりでいた自分が、赤子のように泣き腫らし、取り乱していることが不思議でもあった。 保の葬儀は整理のつかないヨシの心を他所に、粛々と準備が進んでいった。いつまでも一緒に居られると思っていたのに、保は燃やされて灰になってしまうのだと思うと胸が張り裂けそうだったし、張り裂けて仕舞えばいいとすら思った。 その刹那、ヨシの心に、あるアイデアが舞い込んだ。思いついた瞬間にアイデアは成長し、身体は若返ったかのように素早く動き始めた。ヨシは人生で初めて人を騙す決意をしたのだった。保を湯灌していたところに駆けつけると、風呂の後片付けだけはさせてくれと言い張り、誰にも見つからないように湯をすべて容器に移し替え、店の厨房に持ち込んだ。そして、保を湯灌した湯を使い、米を炊いたのだった。居なくなってしまう前に、保の一部を 自分の身体に残しておきたいという、純粋な愛ゆえの行動だった。米が炊きあがると、いつものようにおむすびを、塩握りにした。そして一口頬張ると目の前が真っ白になった。いままで自分が握ってきたおむすびとはまるで違う。天にも昇る味であった。天に昇った保の出汁おむすびは、溢れ出る悲しみを引っ込ませ、おむすび屋としての更なる高みをヨシにみせた。この味は自分だけの感覚なのだろうか、昂る気持ちがそうさ せるのだろうか、気になって仕方がないヨシは、慌ただしく葬儀の準備をする子供達に、労いを込めたと言って、保の出汁おむすびを振る舞った。皆の反応はすこぶる良かった。膝から崩れ落ちる孫、止めどない涙を流す長男。カオルもその場にいた。おむすびを一口、噛めば噛むほど祖父の顔がありありと蘇り、一緒に行った行楽の思い出がリフレインした。ヨシの口許は緩んでいた。 保の葬儀が終わると直ぐに店を再開した。「お爺さんが亡くなっても変わらずお店は続けるの、ひとりだけど思い出があるからね。」その言葉に子供達は感動していた。 勿論、おむすびの隠し味には保の出汁を使った。常連たちが買いに来てくれ、その味に感動してくれた。しかし、保の出汁は保存に向かなかったのか、すぐに味は落ちてしまった。 そこで、苦肉の策ではあったが、家族が入った後の風呂の湯を使ってみることにした。保の出汁には及ばないが、近い味の表現に成功した。米を炊く水を、入浴した風呂の水にするだけで、劇的に味が変わるという不思議は、ヨシの研究欲に火をつけた。家族それぞれ、男、女、小児と採取して味を比べわけ、梅には男、おかかには小児、鮭はブレンドと使い分けることで『おむすびたもつ』は常連のクチコミもあってか、多い日には行列ができる繁盛店へ と変貌を遂げつつあった。 ヨシは厨房に人を入れることをよしとせず、というか、入れる訳にはいかず、1日に握れるおむすびの数が減ったが、これがかえって功を奏したようで、さらに店は人気となり、開店即完売状態となった。この頃から、店には熱心なリピーターが増えるようになっていった。皆一様にこれがないと元気がでないと言うようになり、感謝の言葉を添えて購入していった。最上の褒め言葉を貰うことで、料理人としてのヨシのこころは、更なる高みへと邁進していくのだった。 新たな一手は、近所の銭湯『万歳湯』にあった。利用者の多い休日、たくさんの人間が浸かった閉店間際を狙って、銭湯に出向き、こっそり湯を持ち帰ると、『万歳湯』の出汁でおむすびを握った。味加減如何と言えば、これがまた火花散るパンチの効いた味であった。これには明太子との相性が抜群で、この味が、それまで客層ではなかった若者たちに高評価を得、わかり易く言うならば盛大にバズった。 こうなるとヨシの狙いは温泉に切り替わる。死ぬ前の楽しみと孫を丸め込んで゙は名湯を巡り、持ち帰った温泉水を使っていくつものおむすびを握った。基本は家族の風呂の出汁である。これがベースとなり、そこに『万歳湯』、温泉水とブレンドしていくことで具材に合わせていくつもの味を表現した。研究に打ち込むことで『おむすびたもつ』の開店日は不定期となった。店には毎日人だかりが出来、定休日とわかると客は肩を落とし、悲しみに泣き崩れることもあった。開店日はおむすびを求め、我先にと押し合い圧し合い、喧嘩が起きることも珍しくなかった。客たちの瞳は血走り、おむすびは高額で転売されることもあった。運良く買えても食べるまでは安心できず、おむすび狩りが多発し、刃傷沙汰の危険なおむすび 騒動はメディアで取りあげられ、『おむすびたもつ』の人気を更に煽った。開店日にはガードマンを雇い、争いを諌めなくてはならず、あちこちで衝突が起きた。馬鹿野郎、ぶっ殺すの合唱で商店街は赤く染まるのだった。ついに地域の安全を守れないという理由から商店会長から『おむすびたもつ』の営業自粛を土下座で懇願されるに到った。 ヨシの願いはひとつ。保の出汁でつくったおむすびの味をもう一度味わうこと、そしてそれを超えることであった。しかしヨシは心のどこかで気づいていた。保の出汁を超えることはできないのだと。老人には引き際も大事かと思うようになり、『おむすびたもつ』は無期限休業となった。しかし、おむすびを楽しみにしていた客たちは違った。ヨシのおむすびは、高純度の麻薬を超える依存性を持ち、常連客は皆、おむすび無しには生きていけない中毒者に変貌していた。そして、彼らの依存症は、明確な破壊衝動へと形を変えていった。角材で商店街を襲撃し、商店会長を病院送りにした頃には、立派な暴徒の集団となっていた。ここに到り、警察はヨシをこの騒乱の重要参考人として任意同行した。これには暴徒から保 護する名目もあったのだが、返って火に油を注ぐ結果となり、膨れ上がった怒りは臨界点を瞬く間に超え、投げ込まれた火炎瓶で街は火の海と化した。街の荒廃と共に暴徒は増加し、初動を見誤った政府に対する批判は一層激化した。これを好機と現体制の崩壊を目論む政治屋、暴徒、有象無象が集結した結果、革命軍が爆誕するに至った。 カオルは開いた口が塞がらなかった。祖母が何故か捕まり、革命軍の狙いがこの警察署にあると知り合いの行商人から聞いた時から、嫌な予感はしていた。そもそも、『おむすびたもつ』に行列が゙出来始めたのだって不可思議だった。不審な点は線で繋がり、街を焼く大火の原因が、体制崩壊を目論む革命気取りの連中の勃興が、その渦中に祖母と祖母の握ったおにぎりがあった。なんならカオルの出汁も一役買っていた。確かに、おむすびは人の手で握ると美味しくなると聞いたことがある。人の手の酵素の力がおむすびを美味しくするのだと。だからといって風呂の湯がここまで効果を及ぼすのだろうか。俄かに信じがたいが、実際に騒乱は起きている。というか、今気づいたけど、私もおじいちゃんの出汁おむすび食べてるし。そもそも保の出汁って何よ。美味しかったけど。混乱してカオルの頭の中はグチャグチャだった。 「もうすぐ、革命軍がおばあちゃんを救出に来るよ。この様子だと、警察署はもたない思う」 「革命軍ねえ」 ヨシはおむすび以外に興味がなく、政治なんてものは若い者がやれば良いと思っている。 「おばあちゃんの話を聞いて確信したよ。連中はおばあちゃんをここから助けて、おむすびを握って欲しいのだと思う。いや、助けるというか、利用したいというか。おむすびを使って煽動したいのだと思う。だから、レシピが知りたいんだよ」 「良いかい、カオルちゃん。おむすびの秘密はアンタに教えた。継ぐも辞めるもアンタが決めなさい。私はもう誰にも喋らんさ」 ヨシはそう言って、いつものようにクシャリと笑った。何を言っているのかカオルは理解するのに時間がかかった。 「それにね。おむすびは道具じゃないの。食べるものなのよ」 カオルは背筋が寒くなるのを感じていた。 たった今、祖母から孫へ一子相伝の秘術が口伝にて継承されたのだった。 廊下から、けたたましい音が鳴り響く。怒号と乾いた銃声で我に帰ると、祖母と目が合った。その瞳はひときわ輝いて見えた。 「好きにやんなさい。握ればなんでも美味しいのよ、おむすびは」 Sサイズ:着丈63, 身幅47, 袖丈18 cm Mサイズ:着丈68, 身幅52, 袖丈22 cm Lサイズ:着丈72, 身幅55, 袖丈22 cm Cotton 100% , 6.2oz design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi
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The Perfect Place Tシャツ
¥3,500
The Perfect Place アカイシは癒しを求めていた。昨日、長年勤めていた写真館の仕事にピリオドが打たれてしまったからだ。「インスタ映え、自撮りの時代だもんね」スタジオでの撮影は、いつしか時代と不釣り合いになっていたのかもしれない。3年間のスタジオカメラマン生活、それはアカイシにとって、人生で最も長く続いた仕事でもあった。しばしば「仕事だから」と言っていたが、まったくやりがいを感じていなかったわけでもない。けれど、あくまで仮住まい、その決意は変わらずにいたが、よもや突然なくなるとは思いもしていなかった。案外、居心地が良かったのかもしれない。それほどない蓄えを握り、アカイシは電車に駆け込んだ。港へ向かうと、「伊豆大島まで」と乗船券を買った。 潮風が心地よかった。すべてを洗い流してくれるようだった。船内で物思いに耽っていると、背中に視線を感じた。そっと振り向くと、こちらを見ている若い女がいた。肌艶もよく、ノースリーブからほどよく日焼けした肌がのぞく。アカイシの視線に気づくと微笑んだ。ちょっと一枚と指でサインを送り、シャッターを切った。いい写真だった。 島に着くなり、アカイシは当て所なくぶらついた。目的なんてなかった。ただぼうっと、夕陽が沈むのを眺めた。宿も決まらないまま、すっかり夜も更けてしまった。商店街を歩いていると、ちょうど「スナック桃源郷」にライトが灯ったところだった。「とーげんきょー」アカイシは吸い寄せられるように店の扉を叩いた。 内装はどピンク、桃にちなんだグッズがそこかしこに置かれたカウンター、2人がけの小さなテーブル、店内は5人も入ればきゅうきゅうだ。先客はなかった。 「いらっしゃい、何にします?」 アカイシはカウンターに腰掛けながら「そうさねぇ、ネクターとか?」 ニヤリとしたオーナーは、ジョッキいっぱいにネクターを注ぎ、ドンっと置いた。 「サービスだよ」 アカイシは一気に飲み干した。そして、つらつらと写真館での出来事を語り始めた。 オーナーが腹を抱えて笑ったのは、ヅラのおっさんがスタジオに来た時の話だった。おっさんにヅラがズレていることをそれとなく諭すために、カメラの角度をズラしていたのに、おっさんもその動きに合わせてポージングしてきたため、最終的にズレるどころか落ちてしまったという話。 「その落ちた瞬間の写真が傑作で」 アカイシはおかわりを頼んだ。マスターもすっかりアカイシのことを気に入っていた。すると、少し考える素ぶりを見せ、うんうんと頷き、こいこいとアカイシに手招きをした。 店の奥にはVIPルームがあった。そこには桃源郷という名に勝るとも劣らない、まさにパーフェクト・プレイスが広がっていた。 穏やかな場所、何ものにも縛られない、時間もない場所。すっかり気に入ったアカイシは、いつのまにか懐いていた犬を連れて散歩したり、趣味の観葉植物を愛でたりしながら無限の自由を謳歌した。歌いたいときに大声で歌い、好きなところで立ち小便もした。すっかりマスターのことなど思い出せなくなっていた。ここが伊豆大島という想像すらできなくなっていた。 一体どれくらいの月日が経っただろう。驚くべきことにアカイシはまったく眠気を感じなかった。一日中起きて、やりたいことのすべてをやりたいようにやれた。あらゆる義務や道徳から解放された。そのうち、瞬きや、爪を支えるわずかな筋肉、毛穴の収縮、毛細血管の流れすら感じ取れるようになっていた。重力も知覚できるようになった。次第に、アカイシという人の形を構成していた物質が原子レベルでバラバラになっていった。ふわっと浮いた。身体という感覚も消えた。あらゆる束縛から解放されて残ったのは意識だけだった。 記憶も薄れ、“アカイシ”という名前からも解放された。初めて無限の意味を理解した。そこはまさに完璧な場所だった。たゆたう意識の赴くまま、どこやいつはすっかりわからなくなっていた。すると、遠くから響くかすかな信号音を感じ取った。耳というかつてあった器官を想像する。 山の彼方のそら遠く、幸い住むと人のいう。 「おーい」はるか遠く、宇宙の彼方のそら遠く、聞き覚えのある男の声をかすかに感じた。 「おーい」かつてアカイシだったものは「カ…ズ、ミ?」という記憶の地層から言葉が浮かぶのを感じた。 けれど、その意味ももはやわからなくなっていた。 Sサイズ:着丈66, 身幅49, 袖丈19 cm Mサイズ:着丈70, 身幅52, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈22 cm Cotton 100% , 5.6oz design by ryohei kazumi photo by takaaki akaishi text by taichi osakana
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I GET MAD WHILE SMILING Tシャツ
¥3,500
I GET MAD WHILE SMILING 争いの絶えない時代に安全な此処から、私は笑い続けることをやめないでいる。 笑いとは、集団を成す人々が、他者に対して知性を働かせた時に生まれるとベルグソンは言っていた。ひとりではないからこそ、笑えるのだと。 私は微笑み続けている。こころの根っこにある部分を隠して笑っている。 画面の向こうで起きている苛立ちに加勢するつもりはないし、下から上へスクロールする情報に、ときめきを感じることは少なくなった。 私は私の笑顔が好きになれない。それでも、今日もニッカリ笑い、真っ赤な歯茎が露わになる。 いつからだろう、行動の原動力だったはずの怒りが萎えたのは。根拠のない自身が無くなったのは。 醒めきった想いを抱いて、トマトとアボカドの冷製パスタはいつも美味しい。 あれこれ経験したと、良い大人になったと言い張って、いち抜けたと気取っている。 私は笑いながら怒る。やがてくる、打席の為に。 腐るこころに鞭打つように、 今はただ、微笑む私は常に怒りで満ちている。 Sサイズ:着丈68, 身幅44, 袖丈20 cm Mサイズ:着丈71, 身幅49, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈75, 身幅54, 袖丈22 cm Cotton 100% , 6.1oz design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi ★ご注意ください! 初回ご着用前に他のものと分けて洗濯してください。顔料染め製品で用いている染色方法の特質上、剥がれ落ちた顔料が製品の表面に残ることがあり、 白物、淡色物の衣類と一緒に洗濯すると色移りすることがありますので、同系色のものと一緒に洗濯してください。 冷水で洗濯していただくと色移りが多少防げます。色の変化は製品染め加工の特質によるものです。
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既視感JAIL キャップ
¥3,500
SOLD OUT
既視感JAIL 巨大な黒猫のデジャブに度々遭遇するアカイシが、カズミにこの悪夢を告白したことをきっかけに制作が始まった。 当初、そのデザインが受け入れられないスタッフからの既読無視は、総スルーに至り、あわや制作中止か、という事態にまで発展するが、醒めた世の中へ血染めの鉄槌を加えるという大義を具現化せしめんと商品化を決意。 全ての情報がシェアされ、繋がらずにはいられない現代を、懺悔無用とサバイヴするあなたに贈る。 4年前にカズミとアカイシの思いつきで、メッシュキャップタイプをごく僅かのみ制作した幻のキャップを、ツートンキャップでリイシューします。 刺繍も少し小さくして、一応被りやすさを意識しました。 改めて「全ての情報がシェアされ、繋がらずにはいられない現代を、懺悔無用とサバイヴするあなたに贈る。」 design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi
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The Stories of Adventure tabloid sp edition
¥500
The Stories of Adventure 168話はシーズン8の第6話だよ。 隣に座る男の言葉は呪文みたいで、よくわからなかった。 「だから、シーズン8の第6話だって」 適当な相槌で答える。男が車に乗りこんでハイウェイに合流したのが1時間程前、それからずっとこんな調子で、自分の小説のテレビドラマ化が決まったことについて熱く語り続けている。売れないパンクバンドが成り上がっていく、確か、タイトルは『ホワイトゲート』だったか。捲し立てられた結果、シーズン8も佳境というところまで来てしまった。こんな状況を許してしまったのは、私の性格に問題の一端があるのではないかと、運転しながら自責の念でハンドルが重くなった。シーズン1でフロントマンの女性ボーカル、幼馴染だったはず、が、不治の病で他界し、シーズン4まで引きずった結果、バンドメンバーに犬が加入したり、銭湯に行って全身痒くなったことを歌った一曲がバカ売れするなど、一体この小説のどこが面白いのか、男の感性が気になって仕方がなく、結果としてシーズン8の第6話、通算168話まで耳を傾けて来たわけである。 「じゃあ、アンタは仕事辞めてからそのお話を書いてるのね」 「いや、書いてない。書いた小説がドラマ化するとなると、テレビ屋のことだ、キャスティングにはアイドル事務所とか出て来るだろ。それでくだらないオリジナル展開になるじゃないか。そうなると書いてた小説の内容変わっちゃうからさ、もう、書くの面倒だろ。だから、ここまで含めて全部妄想だよ」 「ああ、そう……」 怖くなったので速攻で話題を変える。 「で、目的は何なの」 車で大森林方面へ向かえ、男からの指示だった。時刻はA.M.3:46。古都を抜けたあたり。 「ーーキミは車を愛しているか?」少し考えてから、神妙な顔で男が答える。 私の中で芽生えた嫌悪感が、急速に形を成しているのがわかった。 小柄な私の愛車は大型のバンだ。仕事に合わせて買ったのだが、ずんぐりした車体の割に、取り回し易い頼れる相棒なのだ。最近では自宅にいるよりも運転している方が落ち着くようになってしまった。大きな車体を動かすだけで、身体が拡張して強くいられるような感覚を覚えたし、なにより運転は考え事をするのに最適だった。 「そうね、偉人か誰か忘れたけど言ってたでしょう。密談するなら車の中だって」 「走っていれば他人に聞かれる心配もないしな」窓の外を眺めながら男が言った。 「では、キミは子供の頃の記憶が鮮明に残っているか?母親に抱きかかえられたこと、初めての友人、楽しかった思い出や恥ずかしい失敗」男が言う。「人並みに」私は答える。 「思い出は映像のようにリニアじゃなくて写真みたいに切り取られたシーンを繋ぎ合わせてると俺は思うんだ。バラバラの断片になって、歳をとるごとにいくつかのカットは色褪せていく。心地よかったり、辛かった無数の思い出は、現在の自分にとって都合が良いように編集されていく。そんな曖昧な記憶にも強烈に焼き付いて残るものはあるだろう。そう、原風景ってやつ。俺にとってそれは真夜中の車内なんだ。眠る街の暗闇を、街灯が等間隔で光っては消える。そんな車内で目的地を目指すんだ。まさに今のこの状況さ」 いまいち話が見えてこない。男の煙に巻くような話し方は私の心を逆撫でする。 「ふーん。で、その目的地ってのはどこなのよ」 「いや、場所は問題じゃない。車の中でどこかへ向かっていると言うことが重要なんだ。なんならガキの頃の俺は目的地について欲しくなかったとさえ思っていたよ。車の中に居続けられたら目的地に着かず、ずっと宙ぶらりんな状態で居られるんだ。目的地に着いてしまったら話が進んでしまうだろう。今日が一歩終わりに向かうんだ。さっき話してたドラマの話、あれも似たようなものさ。大好きなキャラクターたちが、中身もなく一生ドタバタやってて終わらないってことがファンの望みなんだ。200話、300話とストーリーは歪さを増していっても続いていること、その構造が重要なのさ」 「ファンって。アンタの妄想じゃない」蹴り上げてやりたい気持ちは自然に声になっていた。 「突然押しかけて悪いと思うが、俺のわがままに付き合ってもらうよ。キミは運転が上手だし、いつまでも乗っていたいが、互いにそうもいかない事情があるからな。それに大人ってやつはいつだって一方的で時間がないのさ」 一通り話し終わって満足したのか、男は黙り込んで窓ガラスにもたれ掛かり、外をジッと眺めていた。そのお陰で、車は軽快に進む。夜明け前だからか長距離トラックが多い。壁をすり抜けるようにトラックどもを追い越してハイウェイを降り、大森林方面へ。すぐに道路は細くなって寂れていき、人家も疎らな通りに鈴蘭の形をした街灯だけが続いていく。フロントガラスにちらついて舞うのは、何かと思えば雪だった。冷たい窓ガラスが外気温を伝えている。イラついて火照った身体にちょうどよかった。次第に街灯も無くなって、巨大な針葉樹が現れ始めるともうそこは大森林だった。 「この辺りかな」男が顔を上げる。 「もう少しするとドライブイン・愛玉・パークってのがこの道沿いにある。そこで止めてくれ。24時間営業のドライブインだよ」 男の言うドライブイン・愛玉・パークは大森林の輪郭に沿って流れる川沿いにへばりつくように建てられていた。だが、ドライブインは営業しておらず、全くの廃墟だった。看板は剥がれ落ち、駐車場のコンクリートは無残に裂けていた。ツタが建物全体を覆っていることからかなりの年月が経っていることが見て取れる。 「本当にここでいいの?」言われた場所で車を止める。 「さて……。俺がガキの頃は結構繁盛してたんだがな。出店も多くて、宿泊施設もあった。フライドポテトが美味くてな。親父にせがんだ記憶があるよ。なぜか仏像やよくわからないモニュメントがあってな。宗教団体の施設が横にくっついてるとかで、変な場所だったんだが」男が残念そうに呟いた。 「それで?私はどうなるの」 「ああ、キミはここまでで良い。俺は大森林に用がある。ここでお別れだ。いや、このお別れはこの世からのお別れって意味じゃなく」 「笑えないわよ」 「そう怒らないでくれ、この拳銃はキミにやる。お詫びと言っちゃあなんだがな、ここまでの迷惑料にでもしてくれ」そう言って、私に向け続けてきた拳銃を男はあっさりと手渡してきた。 「どういうこと、突然乗り込んで来て脅すわ、つまらないストーリー延々と聞かせるわ、記憶ってなによ。挙句の果てに、この拳銃!」 「それはシグ・ザウエルのP22ーー」 「そういうことじゃない」 「質問は限定してくれると嬉しいが……。そうだな、ノベルゲームにはいくつもの分岐があるじゃないか。ありえない選択をひいたのが今日のキミさ。ついでにもうひとつ興味深い選択をしてみたらどうだ。親父の話じゃあ、ここは地下に大きな空間が広がってるらしい。誰かいるかも知れないが、その拳銃を持っていれば大丈夫だろう、面白いものが見つかるかも知れないよ」 「地下なんてどうでもいいわよ。アンタ、この拳銃で私が撃つとは考えないの」私は男に銃口を向ける。 「それでも良いさ。結果は同じだから」男は微笑んで返す。真黒に濁った瞳とのコントラストが異様だった。 自分の言いたいことだけを告げて、男は背を向け歩き出した。雑木林で見えなくなる前に一度こちらを振り返る。 「俺のドラマの設定、そんなにつまんなかった?」 廃墟の扉は思っていたよりも軽く、あっさりと開いた。外気を吸ってエントランスに埃が巻き上がる。饐えた臭いが遅れてやってくる。土産物屋の棚には商品が埃をかぶったまま置きっ放しになっていて、当時の新聞や雑誌が床にぶちまけられていた。目ぼしいものもなく土産物屋を抜けると、仏像や三角形のモニュメント、およそ統一性を欠いた立体作品が乱雑に設置された広い中庭に出た。男と別れてから雪の勢いが増したようで、中庭はうっすらと白く、静謐な雰囲気を醸し出している。積もるかもしれない。そういえばスタッドレスじゃなかったと帰りの心配をしている自分に気がついて可笑しくなった。男に脅されて運転していたときは、この先はもう無いと思ってヒステリックにさえなったのに。 「いよいよ面白くなって来たわね、サキ」 誰もいない廃墟に自分を鼓舞する虚勢が響き、踏み出す一歩がそれまでより力強い気がした。 中庭を一直線に進む。ついさっきまで私に向けられていた拳銃は冷たい重みで、それでも吸い付く様に、確かに右手に納まっていた。 ENTERTAINMENの肝の部分である、商品のストーリーにフォーカスしたタブロイド。 赤石が紡ぐ壮大で狂った物語を、イかれたデザインに落とし込んだのは、ENTERTAINMENTデザインサービス部門、佐藤薫。 そのタブロイドに、3種のなんだかよくわからないステッカー、タブロイドの解説文をセットにしたスペシャルエディションです。 解説を寄稿してくださったのは、謎のアートアジテーター御坂名太一氏。 イメージや文字がますますデータ化していく中、煙に巻く様な物語とデザインを、五感で感じて下さい。分かったつもりが分からないことが分かるかもしれません。 tabloid: design by kaoru sato (subtle.) photo and text by takaaki akaishi sticker design by ryohei kazumi special thanks by taichi osakana photo by io nishimura
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消滅ノ技法 ロングスリーブ Tシャツ
¥4,000
消滅ノ技法 芸術祭の噂を聞きつけ薄曇の町へやってきたカズミは、絵の具を盛り続け、 塔と呼ばれるまでになった作品を作り続ける籠手柄ミゼンに出会う。 それまでの一切を捨て、塔を制作する理由はミゼンの師匠が今際の際に 告げた言葉にあった。 ミゼンによって語られる芸術家の最期とは。 そして物語は消滅ノ技法へと進んでいく……。 ※続きをお楽しみに... Sサイズ:着丈65, 身幅49, 袖丈60 cm Mサイズ:着丈69, 身幅52, 袖丈62 cm Lサイズ:着丈73, 身幅55, 袖丈63 cm Cotton 100% , 5.6oz design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi
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小夜子の壺 Tシャツ
¥3,000
小夜子の壺 今年一番の問題作、小夜子の壺が完成しました。 この作品は不世出の天才、郡女橋好重(ぐんじょばしよしえ)の小説であり、 新作短編集『荒魂坊主と牡蠣食いねえ』にも収録されることが決定しています。 小夜子の壺は祖母、峰子のもとに転がり込んで来た曰く付きの壺が、親子三代に渡って受け継がれていく様子を、混迷の復興期、あぶくの世紀末、 仮想軸の恋愛の三章に分け、世代毎の苦悩を乾いた文体で活写したことで、 広く支持されました。 挿絵を描いた岩渕華林もこれまでのイメージを払拭するかのように、 底抜けに明るく、祖母の壺を粉々に叩き割ってなお、 悪びれることなく堂々としていた孫の小夜子を生き生きと描いています。 雑誌掲載時に反響の多かった挿絵をそのままTシャツに採用しました。 天才、郡女橋ワールドを身につける時は今。 Sサイズ:着丈66, 身幅49, 袖丈19 cm Mサイズ:着丈70, 身幅52, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈22 cm Cotton 100% , 5.6oz illustration by karin iwabuchi design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi model saki kirizuki
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ENTERTAINMENT シールセット
¥1,500
ENTERTAINMENT シールセット その名の通り、シール6ケ詰め合わせ。 全て屋外でも使用できます。早い自転車やヘルメット、スーツケースや ノートパソコンなどにいかがでしょうか。 サイズ ①複製芸術:4.2 x 10.2 cm ②MUSEUMSHOP:2 x 6 cn ③Concrete Book End:7.9 x 5.5 cm ④お化けの売り子ちゃん:4.5 x 3 cm ⑤娯楽:3.1 x 3.3 cm ⑥ ENTERTAINMENT ロゴ:4.9 x 4.9 cm design by ryohei kazumi photo by takaaki akaishi
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PAN AMERICAN LADIE'S SWIMMING CONTEST 2 キャップ
¥5,500
PAN AMERICAN LADIE’S SWIMMING CONTEST 2 PAN AMERICAN LADIE’S SWIMMING CONTEST 2(以下、PALSC2)とは、 1989年に骨董の買い付けに来日したJohn Greenfieldが、ホテルのテレビで「女だらけの水泳大会」を偶然目撃したことに端を発しています。Johnは日本語を理解していませんでしたが、画面映えするその光景に釘付けとなり、その高いエンターテイメント性もあってか、大変に感銘を受け、帰国後、カリフォルニアでトータルスウィミングコンテストを始めることになります。 本家にあった浮島戦、水上格闘、水上騎馬戦などを踏襲しつつも、純粋に競技として発展していったため、男性視聴者を喜ばせるための分かりやすいセクシャル(要するにポロリ)要員は存在しませんでした。浮島や水中での騎馬戦と個人、団体競技といった混成型のトータルスウィミングによって競うため、水中競技が苦手とされてきた黒人選手が華々しい活躍をみせるなど、これまでの水泳競技とは一線を画すもので、最盛期の競技人口は1万人に届くと言われていました。 しかし、PALSC2の成功によってJohnは人が変わったように自堕落な人間へと変わっていき、幾つもの不祥事を起こし、訴訟沙汰にまで発展、1999年の大会を前に飲酒運転による交通事故でこの世を去ってしまいます。この一件によって求心力を失い、2002年の大会を最後にPALSC2は終了しました。 ENTERTAINMENT創設者のひとりであるマツオはカズミと出会う前にJohnの元でPALSC2のインターンスタッフとして働いており、今年はPALSC2の第一回大会が行われた92年から四半世紀の節目の年にあたるため、当時スタッフに支給されていたPALSC2キャップの復刻版を製作することとなりました。 あの夏いちばん白熱した思い出をあなたに。 フロントに "PALSC2" のロゴを刺繍。 綿100% design by ryohei kazumi text & photo takaaki akaishi model fancomi
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狂騒20s キャップ
¥4,500
狂騒20s 全くもって不本意である。 そういって始めたのだが、気づけばのめり込んでいる自分がいた。馴染んだ身体を動かし、古い文献をデータ化する日々。その方法はまさにアナクロの一言で、遅遅として進まない。とはいえ、その遅さが最近は愛おしくさえ思えるのだから不思議なものだ。 私の担当はだいたい300年ほど前までで、手紙や日記の山は堆く、それはもう雑然と仕事場を圧迫している。今し方、中毒者の告白を録音した音声の文字起こしが終わったところだ。 身体を伸ばして大きなあくび、次の本を山から選ぶ。モスグリーンのスケッチブックに目が止まりページをめくる。100ページくらいのスケッチブックには、ダンサーやバレリーナ、盆踊りの浴衣姿まで、踊る人間たちのドローイングが所狭しと精細に描写され、隅に短い文章が添えられている。文章はとびとびで、気が向いた時に書いていたようだが、添えられた日付を追っていくと、このスケッチブックは18年間に渡って描かれたことがわかった。 いつもなら事務的に処理していくはずなのに、どういうわけか私はこのスケッチブックから目が離せなくなり、作者であるサキという女性について思いを巡らせてしまう。5ページ目に最初の走り書きがある。 ―――方向音痴を治したいと言ったらカオルが地図をくれた。ヨーロッパが中心にある世界地図だった。 スケッチブックに書かれた文章はその時思ったことを何気なく書いていたのだろう、内容は多岐に渡り、描いている踊り子たちのこと、恋人や仕事といった些細なことから、震災体験まで、あらゆることが皮肉たっぷりに綴られていた。そして、あの20年代の終わりと共にスケッチブックも閉じられている。 あの時代。 『狂騒の20年代』だとか『黄金の20年代』そう呼ばれた狂気の時代。まだこの星が広く、旅行にも時間がかかったし、未踏の場所だってあった。モラトリアムと、隔てられた平和の中で、大国は技術革新を進めたが、あふれ返る移民問題を解決する糸口は掴めず、起きるはずがないと言われた大戦の火種はこの時すでに燻り始めていた。 そんな変わっていく世の中で、サキは自身の速度を保って、美しく踊る人間を描き続けていたようだ。歴史に照らし合わせてみると『狂騒の20年代』の初出は200年前、1920年から始まるアメリカの10年間を指した言葉である。 第一次世界大戦が終わり、伝統を越えて文化は花開き、パワーバランスはヨーロッパからアメリカへ移ったが、栄華の時は世界恐慌によって終わりを告げる、そんな時代。 世界的に重要なことは2度起きると言ったのはヘーゲルだ。 2020年からの10年間は最初の『狂騒の20年代』をなぞったように目紛しい時代だった。人間たちは袋小路へと最短距離で突き進み、自らの終焉を予見するかのように私たちの根源をつくった。 特異点以後の動乱によって、人間の大半は消え、有機生命体が生存できる大地も狭くなった。私たちマシンが代替し、記録することで人類史の編纂作業は軌道に乗りつつある。紡がれてきた歴史を自らの手で摘むいだ人間たちの行為が何であったのかを知るために、私たちは早急な回答を求めず、人間性と呼ばれたものを解読するために人間に模倣した上で、収集する方法をとった。私はそのために98%の生体部品によって精製されたガイノイドの入れ物にダウンロードされ、非生産的な作業を続けている。私が得た情報は、ネットワークで並列化されず、スタンドアローンのストレージから3Dプリントによる複製でしか得られないようになっている。情報の差異は個体差を生み、人間のように争いの火種になると危惧する割合もあるが、危険性も織り込み済みで人間の欲求を探求している。 情報の共有に文字を使い、統一された言語を持たない、あまりにも不完全な情報伝達、処理を行う生命体が、生息域による多様性を持って100億に迫っていたという事実はあまりにもでたらめだ。 とはいえ、この作業を続けるうち、私はこの無意味な作業によって得られた情報を並列化したいという思いを少なからず抱いているし、外部記憶に私心を残した人間の浅ましさを尊いとさえ感じ始めている。 サキの踊り子たちを見ていると物理的身体という牢獄が、限界を超えて稼働することの喜びを讃えていると今では理解出来る。 早晩、私は解体されるだろう。 マルクスは1度目は悲劇だが2度目は喜劇となると言っていた。確かに2度目の『狂騒の20年代』は喜劇だった。2120年は目前である。次の20年代が後世に狂騒の時代と呼ばれることになるのだろうか。 なったとしてもそれは悲劇でも喜劇でもないだろう。スケッチブックの最後のページには踊る機械の玩具が描かれていた。 皮肉屋のサキならきっと私たちの狂騒の時代を人形劇と呼ぶだろう。 フロントに "狂騒20s" の刺繍。 綿100% design by ryohei kazumi text & photo takaaki akaishi model fancomi
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ENTERなんちゃらかんちゃらキャップ
¥3,500
ENTERなんちゃらかんちゃらキャップ カズミカズオはもうすぐ誕生日。 習字の師範の免許を持ち、将棋と盆栽が趣味。 誕生日には孫がプレゼントを持って会いに来てくれるのが毎年の楽しみ。 そんな孫たちも20代後半から30代になり、何を話しているのやら一層よくわからんが、 何よりみんな元気に育ってくれて嬉しいのだ。 孫の一人が何やら店を始めるので一筆書いて欲しいとの事なのだが、 一体全体何をやろうとしているのかさっぱりである。 とりあえず書いたものの、自分では納得がいかないが、孫が喜んでいるのならまぁいいか。 そんなカズオも今年で92歳。まだまだ孫には負けてられないのである。 フロントにENTERなんちゃら、サイドには娯楽の刺繍。 綿100% design & text by born machine records photo takaaki akaishi ★商品は着払いにて発送致します。
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映画家族 Tシャツ
¥3,000
映画家族 TOKYO ART BOOK FAIRにて、ENTERTAINMENTブースにお客さんが近寄らない事態を招いた原因とみられているのがこの映画家族です。 でもこの絵柄といい、文字といい、2016年の自信作のつもりです。 ポケットに絵柄をかぶせたのがミソです。分かりますか。 誰にも追いつけない境地にいるあなたにこそ着て欲しい1枚です。 Sサイズ:着丈65, 身幅47, 袖丈19 cm Mサイズ:着丈68, 身幅50, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈71, 身幅53, 袖丈21 cm 綿85%レーヨン15% , 5.0oz design by ryohei kazumi photo by takaaki akaishi
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複製芸術 Tシャツ
¥3,000
複製芸術 ENTERTAINMENTの方向性を決定づけたこの一品は、ブランドの創始者のひとりカズミのバックボーンである版画への敬意に溢れています。 カズミは、度を超えたヴィーガニズムを信奉する教職者の家庭に生を受けます。両親は思想を押し付けることはありませんでしたが、多感な青年は両親の気遣いを歪みとして受け取り、実家を飛び出します。いくつもの仕事を経験し、家を出て2年。その冬は蕎麦屋の出前によって何とか夜露を凌いでいました。終わることのない出前と積み上がるせいろは怒髪天を突く彼の心そのものでした。しかし、年の瀬の出前中、不注意からマンホールに落下、両腕骨折の重傷を負います。失意の病室で偶然見た棟方志功のドキュメンタリーに釘付けになり、これがきっかけとなって両親と和解。指示体に顔を擦り付け舐めながら描くというスタイルでその画業をスタートします。しかし、このスタイルは長くは続きませんでした。舌や喉を酷使しすぎたため扁桃腺を悪くしたのです。二度目の挫折を忘れようと訪れたロンドンでウォーホールのエンパイアに棟方を超える衝撃を受けます。それは8時間その場を動けないほどでした。この時のことを彼はこう回顧します。 「エンパイアは積み上がった蕎麦のせいろそのものだった。いつ崩れ去るか気が気じゃなくてね、おかしいだろ、その場を動けなかったのさ。でも、思ったんだよ、そんなこと俺がやる必要ないじゃないかって、全てを俺がやらなくていいのさ」 こうして自身を蝕んでいた技巧至上主義から解放され、彼の身体はテクノロジーとの付き合い方を模索し始めます。『複製芸術』はそんなカズミのテクノロジーへの敬意を表した一品なのです。 Sサイズ:着丈66, 身幅49, 袖丈19 cm Mサイズ:着丈70, 身幅52, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈22 cm Cotton 100% , 5.6oz design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi
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FOTO DADA Tシャツ
¥3,000
FOTO DADA 上司の地獄のしごきに、遂にアカイシは弱音をこぼしてしまう。 そんな中、愛用のカメラがゲリラ豪雨の被害に。 動揺を隠せないアカイシに忍び寄る謎のセールスマン。 傷心のアカイシは、誘われるがまま連れられたBARで、何でも話を聞いてくれるこのセールスマンについ全てを打ち明けてしまう。 アカイシの話を全て聞き終わると、謎のセールスマンは "FOTO DADA" とかかれたパンフレットを手渡すのであった。 この後アカイシの身に待ち受ける運命とは、 "FOTO DADA"の意味とは... Sサイズ:着丈66, 身幅49, 袖丈19 cm Mサイズ:着丈70, 身幅52, 袖丈20 cm Lサイズ:着丈74, 身幅55, 袖丈22 cm Cotton 100% , 5.6 oz design by ENTERTAINMENT text by ryohei kazumi photo by takaaki akaishi
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ENTERTAINMENT ロゴ トートバッグ 1
¥3,000
ENTERTAINMENT ロゴ トートバッグ 1 こちらのトートバッグには、 猫の糞、おばあちゃん、大型貨物、 赤城山、濡れた犬などは 入れないようご注意ください。 横 48 cm × 縦 40 cm × 奥行き 15cm 12oz design & text by ryohei kazumi photo by takaaki akaishi
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複製芸術 パーカー
¥5,500
複製芸術 ENTERTAINMENTの方向性を決定づけたこの一品は、ブランドの創始者のひとりカズミのバックボーンである版画への敬意に溢れています。 カズミは、度を超えたヴィーガニズムを信奉する教職者の家庭に生を受けます。両親は思想を押し付けることはありませんでしたが、多感な青年は両親の気遣いを歪みとして受け取り、実家を飛び出します。いくつもの仕事を経験し、家を出て2年。その冬は蕎麦屋の出前によって何とか夜露を凌いでいました。終わることのない出前と積み上がるせいろは怒髪天を突く彼の心そのものでした。しかし、年の瀬の出前中、不注意からマンホールに落下、両腕骨折の重傷を負います。失意の病室で偶然見た棟方志功のドキュメンタリーに釘付けになり、これがきっかけとなって両親と和解。指示体に顔を擦り付け舐めながら描くというスタイルでその画業をスタートします。しかし、このスタイルは長くは続きませんでした。舌や喉を酷使しすぎたため扁桃腺を悪くしたのです。二度目の挫折を忘れようと訪れたロンドンでウォーホールのエンパイアに棟方を超える衝撃を受けます。それは8時間その場を動けないほどでした。この時のことを彼はこう回顧します。 「エンパイアは積み上がった蕎麦のせいろそのものだった。いつ崩れ去るか気が気じゃなくてね、おかしいだろ、その場を動けなかったのさ。でも、思ったんだよ、そんなこと俺がやる必要ないじゃないかって、全てを俺がやらなくていいのさ」 こうして自身を蝕んでいた技巧至上主義から解放され、彼の身体はテクノロジーとの付き合い方を模索し始めます。『複製芸術』はそんなカズミのテクノロジーへの敬意を表した一品なのです。 Sサイズ:着丈64, 身幅50, 袖丈61 cm Mサイズ:着丈67, 身幅53, 袖丈62 cm Lサイズ:着丈70, 身幅60, 袖丈63 cm XLサイズ:着丈73, 身幅60, 袖丈63 cm 綿80%、ポリエステル20% 裏起毛 12.4オンス design by ryohei kazumi photo & text by takaaki akaishi ★パーカーのボディが一部メーカー違いの物を使用しており、プリントのサイズに個体差があります。予めご了承ください。