Someone’s Collection Blues sweat

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Someone’s Collection blues スウェット

強制労働の呪縛から抜け出したENTERTAINMENT店主のカズミは、彼を救ってくれた女と古都での出会いを糧に、次なる目的地を学園都市へ定めた。
その旅程、立ち寄った宿場町で商品のコンクリートオブジェを褒めちぎる老人と出会った。エッエッと笑う老人は殊更にカズミの商品群を褒め、自分はこの宿場から三里先にあるラビリンスと呼ばれる美術館の関係者だと名乗り、商品の販売をやらないかと持ちかけてきた。美術館という言葉に興味を惹かれ、二つ返事で了承すると、では行こうとカズミを車に乗せ、車中でこれから行く場所の成り立ちを教えてくれた。それは、小田一成という男から始まる。

小田一成は古くからこの地を守ってきた一族の末裔だという。責任感が強く、勤勉な一成は皆から信頼される傑物であった。22歳の春に父が死に、若くして家を継ぐとともに、結婚したが、時を同じくして始まった戦争によって戦地に出兵されてしまった。激動の時代さね。運転しながら老人は饒舌だった。何度もこの話をしたのだろう、淀みなく昔話は続く。一成の勤勉さは戦場でも変わることなく、よく助け、よく殺した。戦後、やっとの思いで国に帰るも、彼を待つ妻もお腹にいたはずの子も、生家も、帰りを待つ全ては空襲で消え失せていた。抱えきれない絶望と裏山にあった石切り場を残し、先祖から受け継いだ広大な土地を全て売払った。そして、その金を元手に、戦後の混乱を利用して莫大な富を築くと、残った石切り場を深く深く堀り、20年の歳月をかけて1000mの地下まで続く螺旋階段を作り上げた。
そろそろ到着だと老人が言い、話を途中で切り上げた。あなたが一成か。カズミが問うと老人は一成は死んだよと答えた。1000mに到達したあたりだ。きりでも良かったんじゃないのか。穴の底で己の頭を猟銃で撃ち抜き、この世から消えたよ。莫大な遺産と螺旋階段を残して。老人はエッエッと笑い、車は停止した。

石切り場の切立った岩壁の一部に、コンクリートの壁が移植されたようにひっつき、3m程の扉はくすんだモスグリーンだった。堅牢な扉を開けるとすぐに地下へ続く螺旋階段が見えた。階段は男が二人並んでも余裕がある広さで、なだらかに地下へ向かって行く。丸いランプが等間隔で階段を照らしているので考えていたよりも歩きやすかった。前をいく老人が続きを語り出す。先は長い、ゆっくり聞いてくれと言って。
一成の死後、遺言に従って穴掘りを手伝った5人に螺旋階段と遺産が相続された。相続者たちは莫大な金とこの場所を大いに持て余した。そこで5人は螺旋階段の底から横穴を掘り始め、それぞれの空間を作り出すことにした。あるものは物置に、あるものは書斎にしたりと5人は無計画に拡張を続けたが、遺産が底をつく気配はなかった。そこで5人は投資として美術品を蒐集し、穴の底に保管することにした。湿気の問題に腐心したが解決してしまえば一年中、穴の気温は一定に保たれ、その構造はセキュリティの観点からも都合が良かった。美術品の収蔵が軌道に乗り始めると、拡張速度も上がり、次第に人が集まりだした。穴掘り師を筆頭に、壊れた道具を直すために鍛冶屋が定住し、医者が必要になり、そして、料理人と続き、気づけば穴の中には小さな町ができ、家族を迎え入れるものも出始めた。拡張に伴い、地上との運び屋が生命線になり、穴の中での農耕も試みられた。一週間に一度は陽の光を浴びることが義務付けられたが、拡張につれて地上との距離が伸びると誰も外に出なくなった。そこで、紫外線ライトが各家に取り付けられた。穴の中で結婚し、子を授かるものも珍しくはなかった。ひとつの区画は幅50m、奥行き50m、高さ10mに整地され、壁は白く塗られてホワイトキューブとなった。穴掘り師たちが築いた空間に美術品が収蔵されていたが、いつ頃からか展示し、皆で鑑賞するようになった。そして穴はラビリンスとよばれるようになり、相続者たちも自らをキュレーターと名乗るようになった。キュレーターは絵画、彫刻、映像などそれぞれ専門の分野を決め、美術作品を蒐集し、展示していった。彼らにはもともと審美眼などなかったが、ありあまる富はいつでも彼らの味方となった。老人の話は終わらない。底にたどり着くまで語ることはいくらでもあるのだ。深淵に引きずり込まれてしまうのではないかと錯覚し、肌が粟立つも、足は先へ先へと勝手に降りていった。

やっとの思いで螺旋階段の底に着いたころにはカズミの身体は悲鳴をあげていた。横穴を進み、いくつかの小部屋を抜けたところで、視界がひらけ、巨大な空間に到達した。老人は美味そうに水を飲み、カズミにも勧めてくれた。そこは話に聞いたホワイトキューブの展示室だった。煌煌と照らされた空間は充分にスペースを取って、絵画が一点一点展示されている。そして壁にかけられた作品に呼応するように金属や石材の彫刻作品が配置されていた。巨大な稼働壁が迷路を形成し、作品同士が鑑賞の妨げにならないよう最善が尽くされて区切られていた。ここは始まりの展示室で、最初期の収蔵品が鑑賞できる。お粗末なキュレーションだがねと、老人が言い、こっちだ。と感心仕切っていたカズミに催促する。巨大な稼働壁を抜けた奥、積み上がったブラウン管の作品の周りに、人集りができており、荷台引きの馬の姿があった。あれは運び屋たちさ。いまじゃ先端はここから数百キロは先になっている。向こうでは町ごと移動しながら掘り進めていてね、中では農耕も行われてるが、足りないものは沢山ある。美術品もそうだが、画材なんかも必要でね。ラビリンスのアーティストも結構な数になったが、外の芸術を見ることは刺激になる。運び屋は生命線なのさ。いまは3つの旅団に分かれて中継しながら奥まで外の世界の資材を運び、中からは岩盤が運び出されている。全盛期は旅団ももっとたくさんあったのだがね。今は拡張の速度もかなり落ちた。どうするかい、これから出発する。芸術を鑑賞する旅さ。飽きはしないだろう。そして、先端にたどり着けば君は晴れてラビリンスのミュージアムショップオーナーだ。地上には帰れないがね。この美術館は未だに設営中さ、一成が始めた時から数えれば70年近くになるが、いまだ終わっていない。穴掘り師たちが整地した空間を、インストーラーたちはキュレーターの指示で飽きることなく、いつまでも取っ替え引っ替えやってる。勘の良さそうな君ならもう気づいているだろう。私もキュレーターのひとりだよ、二代目だがね。さあ、どうする。老人はカズミに手を差し伸べた。大きな手だ、そう思った。

はたして、自分の選択は正しかったのだろうか。壁にかけられた絵画を眺めながら逡巡する。どんな選択も後悔は残る。ならば、より自由に繋がる選択をしよう。後悔を鼓舞する無意味な独り言は反響して消えていった。店を持つ夢を今し方、手放したところだ。誰もいなくなった巨大なホワイトキューブで、作品を独り占めしながら長い時間を過ごした。そして、気に入った作品はキャプションまで丁寧に描いて記録した。描いていて直ぐに気がついたのだが、作品のキャプションに記載された作家名は全て上から殴り書きで消されていた。誰かの悪戯だろうか、答えを知るだろう老人は、運び屋の旅団と共に旅立ってしまった。謎がまたひとつ増えたが、もう気にならなかった。独り残ったカズミは長い長い螺旋階段を登りだした。別れ際に老人にした質問を思い出す。この展覧会にタイトルはあるのかと。エッエッと笑い、老人は長らく『無題』だったがね、いいのを思いついたよ『人々を照らす明かり』はどうかねと答えた。


茨城はつくばに居を構えるPEOPEL BOOKSTOREにて開催しているショップインショップの為に制作したスウェッです。フロント右胸に作品のキャプションが刺繍されています。作家名は殴り書きで消されています。1点1点消し方が違います。
厚手生地の暖かかなスウェット。割と細めのシルエットです。

caption - installation
ミックスグレー
Sサイズ:着丈64, 身幅52, 袖丈61 cm
Mサイズ:着丈67, 身幅55, 袖丈62 cm
Lサイズ:着丈70, 身幅58, 袖丈62 cm
綿85%、レーヨン15%
裏起毛 12.7オンス

caption - painting
オートミール
Sサイズ:着丈63, 身幅48, 袖丈61 cm
Mサイズ:着丈66, 身幅51, 袖丈62 cm
Lサイズ:着丈70, 身幅55, 袖丈62 cm
綿99%、ポリエステル1%
裏起毛 12.0オンス

design by born machine records
photo & text by takaaki akaishi
model io nishimura